【そして、また。】 002

引っ越し先の動物園は広くてなかなか住み心地がよさそうだ。
飼育員さんは、この動物園のカピバラの子と僕を結婚させるつもりらしい。
いわゆる婿入りってやつだ。

しばらくするとカピバラの女の子が僕の前に連れてこられた。
わずかの差で姉さん女房になるらしい。
飼育員さんがその子に僕を紹介する。

「君の旦那さんになるゴロッちだよ。」

そして、僕に姉さん女房を紹介する。

「ゴロッち、君の奥さんになる、タマゴだよ。」

「タマゴ」という名のカピバラの女の子は、暖かい笑顔を浮かべ静かに僕に話しかけてきた。

  「また逢えると信じてた。願いは必ず叶うから」

その笑顔を見た瞬間、僕は全てを思い出した。

ボロボロと大きな涙が流れた。胸がつまった。
そしてやっとの思いで絞り出すように言った

   「ずっと言いたかったのに言えなかったことがあった。
   今やっと思い出したよ。

   ありがとう、愛してる。」