【やがて来るタイムリミット】 007

次の日、病室に入るとタマはベットの上に座っていた。
今日は少し体調がいいらしい。ちょっとホッとした。

言いたいことがあると僕の顔に書いてあったんだろうか?タマは僕の顔を見るなり
「お母さん、五郎さんと二人で話がしたいの」と言った
付き添っていたお母さんは軽くうなずいて部屋を出て行った。
病室には僕とタマと二人だけになった

【やがて来るタイムリミット】 006

病室にタマはいた。いつもの笑顔で「来てくれてありがとう」と言ってくれた。
3日間会いに来なかった僕を責める言葉は一切なかった。
逆にそれが辛くもあったけど、タマはもっと辛い思いをしているのだ。

今日は起き上がれないらしい。ベットに横たわったままで笑みを向けてくれるのだ。
きっと身体は悲鳴をあげているのに、僕のために微笑んでくれているのだ。

その日の夜、僕は決心した。
僕の正体を告白する。
タマが大好きだったカピバラのゴロゴロとして最期の日までタマのそばにいる。

【やがて来るタイムリミット】 005

それから何をしたか覚えていない。
気がついたら3日経っていた。
ごはんを食べた記憶もないし寝ていた記憶もない。
タマに会いにも行ってない。

余命は4日になってるはず。このままではいけない。いいはずがない。
きっちり予告された日に死ぬわけではない。
今日がその日になるのかもしれないことにやっと気がついた。
とにかくタマに会わなければ。
僕は病院に向かった。

間に合いますように。

【やがて来るタイムリミット】 004

タマによると、その病気との付き合いはもう何年にもなるらしい。
なんか難しい病名を教えてくれたけど、その難しい病名を記憶できるほど僕は冷静ではいられなかった。

余命が短いことを知っていたタマは、僕にそれを告げるか悩んだけど、いろいろ考えた結果黙ってることにしたそうだ。
そのおかげで幸せな1年を過ごせたのだから後悔はしていないと言う

でも、いよいよ余命1週間と告げられた時、ゴロゴロにお別れを言えず悲しい想いをしたことを思い出した。
僕にあんな悲しい思いをさせたくない。最期を看取って欲しいから正直に話すことにしたのだと。

そりゃないよ。
神様、女神様、仏様
なんとか
なんとかならないのでしょうか

【やがて来るタイムリミット】 003

タマが入院した病室に駆けつけると、意外にもタマは元気そうで、僕に笑みを見せてくれた。
それを見た僕はその場でヘナヘナと崩れ落ちた。たぶん腰が抜けるってこういう状態なんだろうと思う

 「なんだ元気そうで良かった」

と言うとタマはちょっと顔を曇らせた

 「それが、そうでもないんだよ…
  …余命1週間だって…」

【やがて来るタイムリミット】 002

僕は悩んでいた。苦悩していた。
間もなくタイムリミットの日が来る。残された時間をタマとどう接すればよいのか、どのような最後を迎えればよいのだろうか?
何かすべきことがあるんじゃないのか?

何も思いつかないまま、残り10日となった日、いつも待ち合わせてる公園にタマがなかなか来なかった。
しばらく待っているとタマの友達が息を切らして駆けつけてきた

 「珠美が倒れて病院に運ばれた」

頭が真っ白になり、しばらく立ち尽くした。

【やがて来るタイムリミット】 001

そんな幸せな日々も終わる日が近づいている。
タマに「ありがとう」を言うために女神様にもらった時間は1年だけだ。

タマにはまだ「ありがとう」を言ってない。
それを言った瞬間に女神様が「想いは遂げられたしもういいよね」って繰り上げ終了されたら困るから最後の日まで言わないと決めたのだ