【タマの告白】 006

私は五郎さんと違って、ちゃんと転生して人間になったんだからタイムリミットは決まってないわ。治療がうまくいけば余命はのびる。
五郎さんが人間でいられる間は私も死なない。治療がんばる。
だから、明日もまた会いに来てね。たくさんお話しようね。約束だよ。

【タマの告白】 005

私ね、人間になってから小学生の頃に流れ星を見つけてね、
「神様、五郎さんとまた逢えますように、逢えたら私、死んでもいい」
ってお願いしたの。
その流れ星はとても長い間流れていて、最後まで願いを言うことができた。
だから神様が願いを叶えてくれたんだと思う。

「死んでもいい」って余計なこと言っちゃったからそれも叶えてしまったんじゃないかな。
これは私のミス。しょうがないよね。だから私は死ぬんだよ。あきらめてる。
でも、五郎さんにまた逢わせてくれた代償だと思えば安いもんだよ。

【タマの告白】 004

そして、せっかくまた会えたんだから生きてる間は笑って幸せに過ごそうって決めた。
実際、幸せな1年を過ごすことができた。

五郎さん、
あなたに出会えてよかった。
私に名前をくれたこと、
私を大切にしてくれたこと、
そして私にたくさんの幸せをくれたこと、
ありがとう。
嬉しかった。とても嬉しかった。
本当にありがとう

【タマの告白】 003

一年前、公園で再会した時も、ゴロゴロが五郎さんの姿になって自分の前に現れたってことはすぐにわかった。
今度は100%確信があったよ。だって昔の五郎さんのままだったから。

ゴロゴロがどうやって五郎さんの姿で私のところに来られたのかはわからなかったけどそんなことはどうでもよかった。
ただ、五郎さんと再会できたことがうれしかった。
びっくりはしたけどね。

五郎さんと再会できた。
また五郎さんと幸せに暮らせる。
神様ありがとう。
そう思ったら、涙が出てとまらなかった

【タマの告白】 002

その後悔の想いが強かったんだろうね。
死んでも猫の頃の記憶が残った。
五郎さんとの生活を忘れることはなかった。
その記憶を残したまま何度かの転生を繰り返した。

犬になったこともある、再び猫に生まれたこともある。
カエルやミミズになったこともあったわ。
でもその間も、五郎さんへの想いだけはずっと持ち続けていた。

そして、人間に生まれ変わった。
あの動物園でゴロゴロをみつけた時、それが五郎さんだってことはすぐにわかったわ。
理由は自分でもよくわからないんだけどね。

【タマの告白】 001

 

私はね、何世代か前の前世、猫だったの。
五郎さんに飼われてた。
五郎さんは私に「タマ」という名前をつけてくれた、
とても優しくしてくれて、私も五郎さんのことが大好きで幸せに暮らしてた。

でも、ある日、私は交通事故で死んでしまった。
悔しかった。後悔した。
幸せな日々をくれた五郎さんに「ありがとう」を言えなかったことをとてもとても後悔したの

【やがて来るタイムリミット】 008

「信じてもらえないかもしれないけど…」

僕は、自分がカピバラのゴロゴロであることを打ち明けた。
女神様に1年の時間をもらったこと、
そしてまもなくタイムリミットがくること、
そしたら自分も消滅する。もしもタマが先に天国に行っても僕が一人で取り残される時間は短い、心配しないで良いからね、と。

カピバラだった頃、タマに親切にしてもらったことを感謝していると告げた。
「感謝している」とは言ったがまだ「ありがとう」は言わなかった。
「ありがとう」は最後の日に言うと決めていたから。

タマは少しの間「クスクス」と小さく声を出して笑ってから、その笑顔のまま言った

   「知ってた」