2021-01-01から1年間の記事一覧
翌日、公園へ。約束の時間よりかなり早いけど他にすることもないし、まぁいいか。 悲しみをまだ引きずっているであろうその子にどんな声をかけるべきだろうかと思案しながら公園に着くと、 その子はもう待っていて、僕をみつけると僕の心配が馬鹿みたいに思…
ひとしきり泣いて少し落ち着いた様子だったので「もう暗くなったし帰った方がいい、家まで送りますよ」と言うと「すぐ近所ですから大丈夫です」と断られた。そりゃそうだ。警戒しない方がおかしい でも「それじゃ、明日は日曜日だし、またここで会って話しま…
その子は、大好きだったカピバラの「ゴロゴロ」が事故で死んでしまったこと、そのカピバラと最初に出会ったは1年ほど前で、それからときどき会いに行っていたこと、自分が行かなかった日に死んでしまったのでお別れを言えなかったこと。それが悲しくて落ち…
「どうしたの?お腹でも痛いの?」と声をかけると顔をあげて僕をみて、びっくりしたような顔をして少しの間固まってしまった。そりゃそうだ。夕方の人気のない公園で見ず知らずの男に声をかけられたのだ、びっくりするでしょうとも やがて女の子はまた顔を伏…
その子には簡単に会えた。食料の買い出しにコンビニに行った帰り道、途中にある公園のブランコにその子が座っているのを見つけた。ブランコをこぐこともせず、何か食べたりスマフォをいじったりすることもなく一人でただ座っていた こんなに早く出会えるなん…
女神様はその願いを聞き入れてくれた。1年だけ人間の姿で転生させましょう。その子を探し、想いを遂げなさいと。 「良いですね、1年だけですよ」
動物園でのんびり暮らしてるとは言ってもストレスがないわけではない、仲間と食べ物をとりあってけんかになることもあるしマナーの悪いお客に嫌な思いをすることもある。 それでも、あの子のおかげで、あの笑顔のおかげで、円形脱毛症になることもなく穏やか…
その女の子は、動物園にときどき来て、僕にたくさんエサをくれた。高校生くらいだろうか?一日中、笑顔で僕だけを見ていた。その子が来るようになってどれくらいになるだろう?最初は、「よくエサをくれる親切な女の子」としか思っていなかったけど、次第に…
気がつくと目の前にあの女神様がいて、僕が死んでしまったことを教えてくれた。そして、生前たくさんの人に癒しを与えたことのご褒美にひとつだけ願いを叶えてあげましょうと言った。 僕の願いは1つしか思いつかなかった。 あの子に会いたい。 会って「あり…
その動物園ではお客さんがエサを買って僕らに食べさせてくれるシステムがあった。お客さんが出入りする扉は2重になってたけど、その日はなぜかすり抜けて外に出られてしまった 別に脱走したかったわけじゃないけどすり抜けてしまったものはしょうがない。ち…
手を見る。指は5本、水かきはついてない。洗面所に行って鏡をのぞいてみる。そこには男の姿があった。20歳くらいかな。普通の人間の男だ。女神様のいう通り僕は人間に転生したのだ。どうせならもちょっとイケメンにしてくれたら…女神さまも気が利かないぜ…
このアパートも、「アパート」とか「1DK」が何なのかという知識も、女神様がサポートとして与えてくれたものだろう。 本来そんなもの知ってるはずないんだよ。アパートに住んだことなんてないんだから。 だって、僕、カピバラだし。
「良いですね、1年だけですよ」 と、その女神様は言った。「わかりました。ありがとうございます」答えると女神様は優しく微笑んだ。すぐにまぶしい光が周囲を照らし、僕はたまらず目を閉じた。 目を開けると狭い部屋の中に居た。どうやらアパートの1室の…